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【2025/07/10 00:40 】 |
迷いの森
初遊戯王テキストにして遊戯が遊星の世界に行ってしまうと言うパラレルです。
パラレル苦手な方はご注意下さい。

遊戯王は初書きなので今ひとつまだ掴みきれてませんと言うかイメージが固定してません。
こればかりは書かないと決まらないかな?
星帯の橋と言うシリーズになりますのでよろしくお願いします。


迷いの森


その日相変らず俺達はデュエルをしていた。
クロウとジャックは些細な事でデュエルをする。
例えば昼食のデザートのイチゴをクロウのプレートから一つジャックが失敬したとか。
子供の頃から俺にとっては当り前の光景だったが子供の龍亞と龍可からにしても不毛な喧嘩としか見えなかった。
溜息を零し呆れながらデュエルを眺めている中にブルーノとアキと一緒に混ざりながらその結果を見ていた。
だけどそこで二人がシンクロ召喚をし、向き合う二体のドラゴンが吠えた。
「おい、この場所でそんな事したら・・・」
止める間もなく吐き出したドラゴンの攻撃に眩い閃光と舞い上がる土煙にとっさに龍亞と龍可を庇いながらその爆風に身を包まれた。
デュエルはそこで終わったのかケホケホと爆風が巻き上げた埃を吐き出しながら中心から逃げる。
暫くしてからクロウもジャックも誇りまみれになって現れた。
中心地にいた二人は埃にまみれ咳き込みながら現れ、特にジャックの白い服は見事埃まみれに汚れているのが哀れだった。
きっとクリーニング代の出費にまたクロウとジャックがデュエルを繰り広げるのだろうと一人溜息を零す。
「今回も痛み分けだね」
龍亞の何処か残念そうな声の代わりにアキは
「これでこりないんだから。少しは反省しなさい」
やれやれと言うように遊星達は帰ろうとした所で龍可が何かに気づいてはじかれたように振り返る。
「龍可?」
龍亞がそんな異変に気づいて振り向けばそれを合図に俺もクロウも、みんなが振り向く。
その合い間に龍可は爆風の中心地に駆け寄ったかと思えば一陣の風が吹き、龍可は横たわる一人の人物に寄り添っていた。
「まさか通行人を巻き込んだのか?」
「まさか、そこまで威力はねぇだろ?!」
俺の予想にクロウは反論しながら慌てて駆け寄ればそこに居たのは時代錯誤の制服を纏った小柄とも言ってもいい少年がうつ伏せで横たわっていた。
龍可の非力な力で何とか助け出そうとするのを見てブルーノが手助けをする。
そして現れた顔に俺達は息を飲む。
「何であなたがこの時代に・・・」
図書館の資料で見た記憶は古くは無い。
スターダストドラゴンを奪われ赤き龍に導かれ過去に出会った人物。
「武藤遊戯・・・」
数十年前に少年だった姿のはずの姿が今ここにある。
赤き龍の力で時間を遡ったと言うのはあれだけ不思議体験をしたのだからなんとなく理解は出来るものの
「赤き龍は現れなかったのに」
アキも驚いて意識を失って力なく横たわる姿にジャックの力強い声が周囲に響く。
「医者には見せられん。とりあえずガレージに運ぶぞ」
凛とした声にブルーノが抱え上げて駆け足でついていく。
その背中を思わずと言う様に見送るも
「遊星行くぞ」
クロウに背中を押されて足を踏み出せば固まった時間が動き出すかのようにブルーノを追いかけた。


ソファに横たえた顔をみんなして覗き込む。
伝説となったデュエリスを目の前にみんなの好奇心は尽きないで居る。
アキが汚れた顔を少しでも綺麗にしようと濡らしたタオルでぬぐう為にかき分けて幼い顔立ちにタオルを二度三度と当てればその冷たさに気づいたのだろう。
「ん・・・」
目を覚ますのを抵抗するように顔を背けるのを見て大丈夫だと安心する一同の気配にゆっくりとその大きな瞳が開いていく。
「大丈夫ですか遊戯さん」
何度か瞬きをくり返し、ゆっくりと体を起こしてから俺の顔をじーっと見る。
焦点があってないのか何処か虚ろだが、それはほんの少しの時間と共に、まるで目を覚ましたかのようにはっきりとした物になる。
「痛いところはありませんか?」
一度奇跡のような出会いの中で言葉を交わしている俺が率先して訊ねれば、驚くように見開かれた瞳と共に
「ええーっ?!何で遊星君?!」
視線を合わせるように膝をついていた俺から驚きのまま逃げるように仰け反るも、それからゆっくりと周囲を見回して知らない顔が並ぶ・・・ジャックの威圧的な上から目線にひっと小さな悲鳴を上げて、今度は俺の後ろに隠れるように移動する。
「ほら、ジャックが怖い顔しているからだよ」
「俺は普段と変わらない顔だ!」
高らかにそう言うも
「その迫力が怯えさせる原因だっつーの」
龍亞とクロウに言いくるめられて息を飲み、場が悪いと見たのかそっぽを向いてしまった。
場が落ち着いたのを見てか居心地悪そうに座りなおして俺を見る。
助けを求めるような上目遣いに小さく微笑み
「ようこそ俺達の時代に」
言えば何かいいたそうに口を開くもすぐ閉じてしまった。
まだ何か言葉を出せないのかとその不安な瞳に笑みを投げかけながら
「そうだ。紹介する。俺達の仲間だ」
「仲間?」
鸚鵡返しに問われた言葉に頷きすぐ傍にいた龍亞と龍可から紹介する。
「双子のお兄ちゃんが龍亞君で君が龍可ちゃんだね」
龍亞と龍可の無償の笑顔を向けられて落ち着いたのか遊戯さんも何処か安心したように笑顔が浮んだ。
「そしてアキさん」
「よろしく」
笑みを浮かべて返すアキに照れたように頬を赤くすれば、アキまでつられて赤くなっていた。
「それにクロウ君とブルーノ君」
一番一般的な二人の笑みに人の良い笑みがついにこぼれた。
「そしてジャック君」
見下ろす視線に少し引き攣りながらもごめんなさいと言う。
ほぼ初対面に近いのに何を謝りだしたかと思えば
「僕の知り合いに君にそっくりな人が居て、つい・・・」
反射的に逃げてしまったのだと恥かしそうに告白。
そしてジャックに視線を投げ
「ほら見ろ!俺は何も悪くは無い」
潔白を証明されれば腰を屈めてまで威圧するようにクロウに宣言する。
遊戯さんだけではなく呆れてしまうもおかしそうにクスクスと静かに笑う。
そんな遊戯さんに俺達は事の成り行きを説明する。
不安な顔に出来る限り不安を重ねないように、そしてこの不可思議な現象を予想を織り交ぜながらも説明すれば・・・そこには簡単には帰れそうにない壁が立ちふさがっていた。
「でもデュエルが原因ならデュエルで帰れるかも」
龍亞の子供らしい発案にクロウとジャックがお互いの目を見る。
「デュエルだ!」
高らかな宣言と同時にガレージから二人は飛び出し早速言わんばかりに夕焼けの中デュエルを始めた。


「ふわぁ。まだ何にも起きないの?」
すっかり夜の帳も下り月も既に傾いていた。
あれから何回目のデュエルか判らなくアキも既に帰りブルーノはいつの間にか眠ってしまっていた龍可をつれてガレージに帰ってしまっていた。
龍亞もうつらうつらとしながらそれでもまだデュエルを見ていた。
俺もさすがに疲れて遊戯さんと隣り合って座り込んで見ている。
そしてデュエルしている本人達も息を切らしながらやっとの事でその場に立っていた。
何回めかのデュエルが何事も無く終われば二人はカードをセットしなおしてデュエルと新たな宣言と共にカードを引こうとする。
「まってー!」
突然の叫び声と共に立ち上がった遊戯さんに二人の手もさすがに止まる。
「今日はもうやめにしない?」
恐る恐ると言うように二人の間に入るのを見て俺も追いかける。
「そうだな。これだけやって何もないのならこれ以上やっても結果は同じだろう」
二人に言えばしかたがないと言うようにと言うか疲れたように座り込んだ。
「さすがに今日はもうデュエルやりたくねぇかも」
「同じくだ」
責任を感じてか愚痴一つ零さずデュエルを続けた二人の思わぬ零れ落ちた一言に俺は二人に手をさし伸ばし帰ろうと促した。
遊戯さんもジャックに手をさし伸ばし立ち上がらせようとすれば、少しだけ気まずそうにそっぽを向くも一呼吸置いて向きなおしジャックはそのまま手を掴み立ち上がる。
「いつか必ずお前を元の時代に返してやる」
力強い決意には何処か優しげで、遊戯さんはその気配に怯える事無くその視線を受け止めジャックにはじめて笑みを向ける。
「うん。僕も自分のことだから出来る限り協力するからよろしくね」
初めての会話らしい会話にやっと二人の緊張が解ける。クロウと二人安堵しながら見守っていれば二人はそのままなにやら話しをしながらガレージへと向かって行ってしまった。
急に仲良くなった二人にクロウと二人何が起きたかキョトンとして見送ってしまう。
「なんだあれ?」
「さあ」
としかいい様がない。
「ま、俺としてはあの二人が仲良くやってくれるぶんには全然問題ないんだけどね」
呟くその言葉にうんと頷きながらも急に仲良くなった二人にもやもやした物に気づいて今度は俺が視線をそらせてしまった。

龍亞と龍可をクロウと二人で家まで届け戻ればソファーには眠りについていた遊戯さんが居た。
ジャックにもたれるように眠っていて、ジャックはそれを邪魔しないように静かに本を読んでいた。
「ブルーノは・・・って、あれ?寝てるのか?」
クロウが顔を覗き込むもスースーと零れ落ちる寝息だけが室内に響く。
「ブルーノなら夕食の買い出しだ。遊戯は理解不能な出来事の連続に疲れていたようだからな。
 お前達が出て行ったあとすぐに寝てしまった」
かれこれ数十分と言う間ジャックはいつの間にか眠ってしまった遊戯さんに肩を貸していたのだろうか。
「って、いつの間にか呼び捨てかよ。
 寝てるのに気づいてるのならベットに運んでやれよ」
仕方ないなといわんばかりに髪を掻き毟るクロウの言葉に頷き俺はその小柄なまでの体を抱き上げる。
そしてそのまま俺の部屋へと足を向ける。
「今日はゆっくり休んだ方がいいだろう」
誰の言分けでもなく自分への言分けをするように呟きながら部屋へと運び、そっと自分のベットに寝かして部屋を出ようとすれば背後で何か気配が動く。
部屋から溢れる輝きに思わず視界を手で覆えば、その光に気づいたジャックもクロウも慌ててやってきた。
暫らくもしないうちに輝きは落ち着き、ベットの上には一人の男が足を組んで座っていた。
誰だ?と言うように灯りをつけたクロウはその人物に眉間を寄せる。
それはさっきまで知っていてまったく異なる存在だから。
ジャックもその変化に気づいてポカンと口を開けているのを何処か楽しそうに静かに笑う。
「久しぶりだな遊星君」
先ほどより少し落ち着いた声音にあ、と声を上げる。
「名もなき王」
呼べばニヤリと口角を上げた。
「これが」
「名もなき王・・・」
話では説明したけど実際見るのとではまったく違う。
まとう空気も存在感も。
もう一人の遊戯さんは二人が落ち着くのを待ってから俺を見る。
「何かとんでもない事になったな」
何処か疲れた口調に思わずクロウと二人すみませんと謝るも遊戯さんは笑みを携えたまま
「まあ、不思議体験は慣れっこだがな」
と、ひょいと肩をすくめて見せる。
「だが、相棒が思ったより心を痛めている」
まるで自分の事のように、実際心を共有しているからだろう。その痛みが自分の物のように苦しげな表情をする。
さっきまで気丈にデュエルを眺めていたり、ジャックと楽しそうに話して見せたのは心配かけないようにとした物。
そんな優しい遊戯さんに俺達は顔を見合わせもっと気を配らなくてはと反省する。
「俺も注意してるつもりだが、良かったらこの世界にいる間相棒の面倒を見てもらいたい」
真に気遣っての言葉にジャックがうむと頷き
「俺達のした事で迷惑をかけている以上責任は最後まで持つ。
 安心して任せてくれ」
思わぬ強気のジャックに
「ジャックに任せるほうが心配だって言うの」
クロウの言葉に思わず笑うのはもう一人の遊戯さん。
表の遊戯さん同様クスクスとくすぐったげに小さく笑ったかと思えば
「何かあったら俺も出る。
 とりあえず今は相棒の体調が心配だから休ませてもらうが、明日からよろしく頼むな」
そういって一つ笑みを浮かべたと思ったら光がまた輝き、倒れこむようにベットへと突っ伏した。
「現れるのも突然なら去るのも突然なんだな」
クロウが孤児院の子供達と同じようにベットに横たわらせて布団を掛けながらその顔を覗き込む。
そして灯りを消してドアを閉じ、買出しから戻ってきたブルーノと一緒に夕食をとり、新たに増えた住人の説明をして俺達の新しい生活が始まった。

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【2010/09/27 23:59 】 | 星帯の橋
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