テンペスト 01
新学期になり新入生が入り学校は賑やかになった。
窓際の席にジャックとクロウと一緒に窓の外を見ながら春のうららかな陽気の中他愛もない話しにぼんやりと時間が過ぎて行った。
「にしても、一年坊主はまだ可愛いよなあ」
クロウが窓枠にもたれながら新しい制服に身を包む新入生に鼻を伸ばしているのをジャックはふんと鼻を鳴らして小馬鹿にする。
「可愛いって言うのも夏までだ。まあ、それまでに目ぼしいのを見つけてみろ」
絶賛彼女大募集中のクロウに言いながらジャックも窓枠にもたれながら一緒にあれやこれやと言うのを聞きながら怪しげな一団が校舎の裏に回りこむのを見た。
「おい、あいつら」
まったく違う方を向いていた二人に言えば二人とも口を閉ざし校舎の影に隠れる姿を見て眉間を潜める。
「あいつら新学期早速カモ捕まえやがって」
行くぞとは言わず揃って立ち上がり教室を出る。
威風堂々と言う姿で先頭を歩くジャックの後ろを面倒臭そうに、でも何処か剣呑な気配を纏うクロウの背中を眺めながら窓から見える林に隠れた姿を視界の端に捉える。
まだ暴力沙汰にはなってないもののどこか急ぎ足で歩くのは、校舎裏の林に向かった奴らが学校でも有名な落ちこぼれ三人組だから。
気弱な生徒を人気のない所に連れ込み金品を巻き上げ、抵抗すれば力ずく。
今だに居るんだなと言うような正しい不良の姿は目を覆わんばかりの被害があり、教師さえ逃げ出す勝手放題に失うものなんてない俺達が可能な限り目を光らせる事で被害を最少にしていた。
奴らが通った道を辿り校舎裏の林へと足を向ける。
まだ暴力沙汰にはなってないようだったが、連れ込まれた生徒は木に背中を預け、乱暴な口調に抵抗するかのように懸命に首を横に振っていた。
怖いのだろう。薄っすらと目尻に涙を浮かべながらも抵抗する1年生によく頑張ったと心の中で誉めながら、わざと桜の花びらが敷き詰められた絨毯の上を足音高くゆったりと近づく。
気配を察してか、俺達が来るのが予測済みなのか嫌な笑みを浮かべながら振り向く三人に
「早速一年生を連れ込んでお前らも暇だな」
クロウが挑発をすればご丁寧にも不気味な笑みを俺達に向けてくれ、何か言おうとした瞬間その姿が消えた。
何所だ?!
クロウとジャックで背中をあずけるように構えようとするも突如現れたもう一つの影が一人、そしてもう一人としなやかな動きで三人組を伸していく。
「大丈夫か相棒!!」
「大丈夫とかよりも一体どこから来たのさ?!」
さっきまで震えて涙をこらえていた1年生の何処か青ざめた質問に彼を相棒と呼んだ相手はただ指を空に向ける。
「三階から木を伝って上から・・・」
「君に何かあったらどうするの!!」
心配掛けないでと泣き叫ぶけど、それよりも非常にピンチだった1年生
に「相棒に涙を流させたんだ。死罪決定だ」なんて恐ろしい事を真面目な顔で言う相手に涙なんて大した問題じゃないと言う。
寧ろ泣かせた決定打は木の上から降りてきた突然の出現の方にあると思うも、まるで恋人同士のように涙を拭っている光景に口を挟めないで居た。
思わぬ出現に気が抜けてどうしたものかと思っている合間に、たかられそうになった1年生は俺達を思い出したかのように顔を上げ、木の上からやってきた連れの手を引き
「さっきはありがとうございました」
丁寧に頭を下げるも二人並んだ姿に俺達は驚いた。
瓜二つの纏う気配だけが違う双子と言っても良いような肌の色だけが違う容姿の二人に驚きは隠せないで居た。
「・・・遠い親戚か何か?」
クロウが聞くも違うと二人はそろって首を振る。
「俺はアテム。フルネームはどうせ覚えれないから勘弁してくれ。で、こっちは相棒の遊戯」
姿形はそっくりでも性格は正反対なのか、助けた方はちょこんと頭を下げただけだった。
「相棒が世話になったみたいだからな。感謝する」
感謝するといわれても何処か上から目線のアテムに遊戯は耳打ちする。こう言う時はありがとうって言うんだよ。何て、丸ぎこえだけど少し驚いたかのような顔をしてアテムがありがとうと言い直すのだからクスリと笑みさえ浮んでしまう。
「いや、どうやら俺達はあまり役に立たなかったみたいだからな」
感謝される事は無いと言うも少しだけ真剣な顔をして二人の瞳を覗く。
「まだこの学校に不慣れだから知らないかもしれないが、この三人は学校でも有名な不良だ」
「で、これからこいつらが卒業する一年間目を付けられるかも知れないからあまり一人で行動しない方がいいぞ、てね」
クロウがなるべく明るくあまり気に障らないように忠告すればアテムは口の端を上げて小さく笑う。
「忠告ありがとう」
何処か勝気な彼はまるで挑戦状でも叩きつけられたかのように寝転ぶ三人を見下ろすも
「あああ、ほんと無茶しないでよ」
何処か頭が痛そうな顔で何処か脱力したかのような遊戯は心配げな視線をアテムに向ける。
「じゃ、そろそろ教室に向おうぜ」
「そうだね。杏たちが心配するしね」
言って失礼しますと何処か礼儀正しい遊戯がまたちょこんと頭を下げて去って行った。
「中々骨のある一年生だな」
人を誉める事を知らないジャックの賛辞に素直に頷いて見せるも
「あれで赤の他人なんだから世の中不思議だな」
クロウの呟きにも頷かずに入られなかった。
[7回]
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