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【2025/07/09 10:00 】 |
テンペスト 02
早速の拍手ありがとうございます!
学パロでクロスオーバーの遊表。
苦手な方は逃げてください!

テンペスト 02


学校の帰り道を急ぎ足で帰る。
今日に限ってなんでHRがこんなに長いのかと毒づきながら街中に置かれた時計を見て舌打ちをする。
街中のビルの壁に映し出すスクリーンは既に今季の大会の生中継が始まっていた。
世界各地で各国国内代表の32人のデュエリストが一年を一シーズンに10回の大会を開き、一年を通しての総合得点でチャンピオンの座を争い、チャンピオンになれば来季のチャンピオンにディフェンディングチャンピオンとしてデュエルすると言う名誉を手にする事ができる海馬コーポレーション主催のワールド大会があった。
当然チャンピオンの一年スポンサーがつき、世界中の大会に無条件に参加資格が与えられ、CM出演料も桁違いに跳ね上がる。
夢のような待遇にデュエリストなら誰でも一度は憧れる世界だ。
が、当然その大会にも地方予選の突破と言う大きな壁があり、学生の身分では中々参加しにくい条件に高校を卒業して挑戦しようと息をまくのは俺だけでは無い。
ジャックもクロウも当然少ない地方の出場枠を狙っている。
一度出場枠を得れば資格は永続的に保持する事が出来るのだが・・・エントリー料の高さに一年間バイトで貯めた金額は条件を十分満たしていた。
ただ今年のエントリーには間に合わず悔しい思いをしたが、今更悔やんでももう遅く、来年に向けて腕を磨くのが今出来るトレーニングだった。
本当なら会場に足を運んで生のデュエルの空気を体験するのが一番良いのだろうが、入場チケットもプラチナチケットと言われるだけに入手さえ困難な状況だ。
だからせめて夜の再放送ではなくライブ映像で少しでも同じ時を共有しようと思っていたのだが・・・
今さっきまで俺と同じように走っていたはずのクロウの気配が消えていた。
振り返ればビルの外壁のスクリーンの前に立っていた。
他にも何人も足を止める先に映し出される奇跡の瞬間に魅了され、クロウの意識は既にここには無い。
確かに急いで帰っても終盤しか見れない事を考えればここで足を止めてみるのもありだなとスクリーンの前にジャックと一緒に移動する。
既に一回目のバトルを終えた所もあり、勝者と敗者に別れて退場する後ろ姿が寂しげに映されていた。
折角の予選を通ってもあんな風にはなりたくないと自分の中でカードを引く瞬間をイメージしながら対戦相手に相対する。
そして二回戦のベスト8がそろうと15分の休憩時間が挟まる。
「よし、その間に帰ろう!」
こんな所ではなく家でじっくりと見ようと言うクロウに頷き、走り続ければ後10分の家を目指して駆け出した。
時間はギリギリ間に合い三人で借りてるアパートに駆け込んでテレビを付ける。
そうすればまだ主なダイジェストが放送されていて、改めて見損ねた前半の第一回戦の試合を見る事が出来た。
そこで思わぬ顔を見つけた。
小柄でどこか華奢とも言っても良い細いラインはつい最近知り合った人物だった。
だけどその瞳は何所までも勝気で鮮やかなカード捌きとカードを操る美しいまでの指先に魅了されながらも
「おいおい、何であいつが」
「デュエリストだったのか?」
「確か、アテムだったな」
力強く、自信に満ちてカードをドローし、チラリと見た瞬間から繰り出される流れるようなチェーンの繋がりに一瞬で対戦相手はライフを総て失っていく。
息をつくまでもなく終わってしまった彼のデュエルに実力の半分も出していないことぐらい明白だ。
コメンテーターの二、三の語りの後に始まった三回目のバトルには既にクローズアップされていて、モニターの半分を埋める彼のアップの隣には彼の過去の戦歴が現れていた。
アテムは既に世界でも指折りのデュエリストどころか複数のチャンピオンのちいを築く決闘王でそんな人物がこの大会に出場しているのだと思えば、三期連続ディフェンディングチャンピオンの海馬とデュエルする為だと解説されていた。
あまり露出の少ない選手でデータはあまりないものの、そのマジシャンズデッキは彼の知名度よりも有名なのは本人を知らなかった俺達だって知っている。
そして一斉に始まった3回戦も鮮やかに勝利を収め、5回戦目になる決勝戦さえ鮮やかに、敵はなしと言わんばかりに勝利を収めていた。
圧倒的過ぎるその強さと当然と言わんばかりの勝利の笑みに目所か心さえ奪われていれば彼は嬉しそうに観客席の方へと向い、観客席から手を伸ばされた無数の手の内の一人の人物に手を伸ばしていた。
「あれ、遊戯だ」
友人の勝利に誇らしげに笑みを浮べるも、アテムによって観客席から引っ張り出された遊戯は彼と抱き合い額を寄せ合ってなにやら楽しそうに会話をしながら勝利を分かち合っていた。
そっくりな二人にカメラのフラッシュがテレビ越しでも目がくらみ、アテムは観客席に向って手を振り上げながらそのまま遊戯と肩を組んで嵐のような歓声の中会場を後にした。
鮮烈かつ華麗なこの国でのデビューに暫らく放心しながら次の番組に変ったテレビを眺めていた。
あんなにもデッキと強い絆で結ばれたデュエリストなんて見た事無い。
手を伸ばして掴んだ自分のデッキを眺める。
自分のデッキに自信はあったつもりだったが、あんなデュエルを見せられて魅せられて恐怖を感じずには居られない。
恐怖を感じた時点で俺は戦わずして負けた事を察したが、それで終わる俺では無い。
机の上にデッキを広げ自分の欠点を探す。
あれだけ自由に何者にも縛られずカードを導く指先はまさに魔術師。
脳裏に焼きついたデュエルでカードを捲っても勝てる気配は無い。
「あれで俺らより年下なんだよな」
その声に意識が浮上すれば隣でクロウがぺろりとカードを捲って難しい顔をする。
「まあ、あれが世界で戦っているプロと今の俺達との差と言うことだろう」
クロウと同じようにカードを捲ったジャックの渋い顔を見て俺もカードを引く。
「とりあえず全敗か」
俺の顔を見たクロウの一言に溜息を吐き
「チャンピオンは遠いな」
溜息交じりの声に負けを認めるようで頷く事は出来なかった。

拍手[6回]

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【2010/10/22 22:42 】 | テンペスト
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