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【2025/07/08 20:52 】 |
テンペスト 10
漸く続き・・・
難産でした。
それはいいとして<よくない。
タイトルの一覧にこれまだリンク張ってなかったんだね。
自分で吃驚w
テンペストはまだ続くけど向うの奴もこっち持ってきても大丈夫かな?
やっと充実する感じです☆


テンペスト 10


すっかり陽も落ち観覧車に乗り眼下で眩く繰り広げられるイルミネーションの美しいパレードを見ていた。
パレードのために観覧車のライトアップは落とされ暗闇の中からぽっかりと浮ぶ光の幻想を言葉も無く見詰める。
遊戯と遊星はあれから一日ここで遊び続けた。
長い列に並んで新アトラクションも無事体験できたし、二人でお昼も食べた。
それから海馬ランドならではの大会用デュエルフィールドでの対戦はその後レベルの認定書までもらえると言う機能に遊星がレベル8の認定書のカードの手にした時は遊戯はまるで自分の事のように嬉しそうに笑った。
後は定番のジェットコースターとか一通りためして、気が付いたら暗くなってて、でも始まったパレードは見て見たいけど人込みに少し疲れ観覧車から見ようとの提案は歩き疲れた足に賛成をした。
までは良かったが、ここに来て緊張している。

窓に凭れながら眼下の景色を眺める遊星の正面に座ったボクはその横顔を見て顔が熱くなった。
久しぶりの再会は何日も会ってない寂しさを埋めるように会話に溢れ、嬉しくはしゃぐもここに来て途切れた会話に最後に会った日を思い出す。
成人に近い面立ちと逞しい体型はまだ子供らしさを残す遊戯から見れば憧れにも似ていて、すっとした鼻筋や意志の強い瞳、口数は多くない物の、不意に緩んだ口元が作る滅多に見せない笑みは思わずこちらが照れてしまう物だった。
機嫌がいいのか観覧車に乗ってからずっとそんな笑みを浮かべている遊星をまともに見ることはできず、チラリと気にしてはその横顔を覗いては視線を下に向ける事を何度と繰り返していた。
「何か聞きたい事があるんじゃないのか?」
何で判るの?!何て心の中で叫びながらあははと冷や汗を流しながら遊星先輩の正面を見る。
遊星先輩も狭いゴンドラの中で正面を向いてくれるのは言いけど膝がぶつかって思わず縮こまる。
そんなボクを見て遊星先輩は小さく笑うも
「この間の事か?」
ばっさりとボクの聞きたい事を口にした。
あの時の事を思い出して思わず顔が真っ赤になるものの先輩は瞳を伏せただけ。
ただ、今日一日絶やさなかった笑みが酷く穏やかに見えて、不覚にも見惚れてしまう。
「理由は簡単だ」
足元で賑うパレードの光と音の洪水の中この場は酷く静かで呼吸のひとつひとつが耳を触る。
それ所か心臓の音まで聞えてしまいそうでなお小さくなってしまえば頭上から声が降り注ぐ。
「もう遊戯と会えないかと思ったら自分を抑えれなかった」
きゅっと腕が背中に回され引き寄せられた。
そのまま膝の上に座らされ、ボクの首筋に先輩の額が押し付けられる。
「あ・・・」
「好きだから、最後に思い出が欲しかった」
首もとで継げた言葉がボクを擽る。だけど
「最後?」
意味が判らなかった。
あまり良い感じの響じゃなく不安がかきたてられるも、それを意味する言葉を遊星は言う。
「遊戯が二度とあんな怖い思いをしないように、アテムが守ってくれるから」
言われて気が付いた。
確かにアテムがボクに過保護なのはいつもの事だがあの日以来どんな要件があってもそれを後回しにしてボクを家まで送ってくれていた。
出かける時は待ち合わせなどしないで迎えに来てくれたり、どうしようもなく無理な時は彼の腹心の部下とも言うべきマハードをボクにつけてくれていた。
今日の朝だって・・・
相変らず大袈裟だなと思っていたけどそんな意味まであったとは思わなくって驚きと同時に怒りも湧き起こるが
「俺の出る幕は無いと悟った」
近くで花咲く花火の音さえ聞えなかった。
周囲の暗さだけでは足りない闇に視界を覆われた気がした。
そんな事無いと顔を上げようとするもより強い力で遊星に抱きしめられてその顔さえ見る事が出来ない。
「だから忘れようとした」
遊戯と過した時間をいつの間にか密かに育った想いをあの日を最後にただの同じ学校に通うそれだけの間柄にリセットしようとしたとやっと聞えるような何処か震える声で打ち明けられた。
身動きできない遊星の腕の中でもがきながら腕を背中に回せば遊星の体が小さく緊張する。
密接する体に縋りつくように、震える声で
「そんなの嫌だ!遊星先輩に忘れられるなんて嫌だ!!」
もう泣き声だったかもしれない。
悲鳴と呼ぶに近い叫び声でその恐怖に駆られるまま縋りつく。
「ゆ、遊戯・・・」
戸惑う遊星の声にさえ気づかずに「嫌だ、嫌だ」と幼い子供のように繰り返して訴えるもさっきまで抱きしめてくれていた腕が優しくボクの肩を押しまた正面に座らせる。
急に離れたこの距離と先ほどまで重なった体温の温もりが急に冷えて心まで冷えていくも留める事を知らない涙はなお溢れ、ぼやける視界の向こう側の遊星が浮かべる微笑の余裕が悔しくて思いもしなかった言葉をぶちまける。
「ボクと遊星先輩が喧嘩したわけでも、嫌ったり、疎ましく思ったり、側に居たくないわけでも顔を見るのも声を聴くのも嫌じゃないのに何でそう言う事になるの!」
感情に制御されない言葉は心からの本心だ。裏を返せばどれも嬉しい言葉なのだが
「違う。ただ・・・」
ここから先は言おうか言わずに留めておこうとした言葉。
既に決めた選択は後者だがこの状況では言わずには居られない。
いつも穏やかな陽だまりのような遊戯の初めて見るこんな激情に戸惑う以前にまだ知らない彼を知って驚く反面、短い付き合いとは言え見知らぬ遊戯の表情をこれから知る事はできなく悔しいのも事実。
もっと遊戯を知りたいと言う好奇心を押さえ留めていた言葉を紡ぐ。
これから先を言えばきっと遊戯じゃなくても軽蔑してくれるだろう。そうすれば・・・
「遊戯を友達の一人として見る事が出来なくなる」
涙を浮かべながら俺を睨目つける視線を正面に見詰め返す。
感情が制御できないのか珍しくも怒った顔なのだが少しだけ意味が判らないと言うように眉間が狭まる。
「さっきも言ったように俺は遊戯を好きだ。言うつもりは無かったが、一度口にしたらもう止まる事が出来ない。
 だけどアテムのように俺は遊戯を守る事もできなく、何もしてやれない」
睨む視線こそ驚きに変るものの俺が口にした言葉の意味を理解できないでいたようだった。
別に理解してもらいたいわけでは無い。これは俺の気持ちの問題なのだから。
男に告白されるなんて気持ちの良いものでは無い。
俺だったら間違ってもごめんだ。
ただ、それが遊戯なら別の話しで、人を愛すると言うのはそういう些細な事さえ超えた気持ちだと言う事だと知ったばかりなのだ。
告げられたばかりの遊戯が戸惑うのは当然の事で、ポカンと開きっぱなしの小さな口に自分に苦笑。
このまま俺が口にした事を理解して嫌ってくれれば良いのにと自嘲気味に心の中で自分を嘲笑うも、目の前では突然遊戯は背中を丸めて蹲っていた。
「ちょ、どうした・・・」
狭いゴンドラの中で思わずと言うように俯いた遊戯の様子を見るべく膝をついて様子を窺うように見上げれば思わず重なった視線が何処か潤んでいた。
何かよく判らないが
「大丈夫か?」
ゴンドラの中が暑いわけでもないだろうと冷静にそんな事を考えてしまうが、先輩が・・・と、ちいさな呟きが抗議を上げるのを耳にする。
何だと言うようにそのまま遊戯の顔を覗いていれば
「先輩がそんな事言うから・・・」
やっぱり原因は俺かと判りきった事だがその先を言うのを黙って待てば

「どうしよう。ボクすごく嬉しい」

青天の霹靂と言うのはこう言う事だろうかと自分でも追いつかない思わぬ喜びにそのまま遊戯の瞳を覗く。
「先輩の事は好きだよ。だけど、こんな風な気持ちになったのは先輩が初めてだし・・・」
気持ちを持余していると言うところだろう。
思わず無言になってしまった狭いゴンドラの中で二人動けないでいればすぐ側を花火が夜空に大輪の花を咲かせた。
つられるように二人して見上げながら遊戯を抱き寄せた。
あわわとうろたえる遊戯は暫らくするうちに大人しくなり居心地のよい場所を見つけたのか肩口に頭を摺り寄せて
「先輩、すごく早い・・・」
何が?と聞くよりも早く目を閉じて心音を聞く遊戯は何処か楽しそうに耳を傾けている。
何とか冷静を努めていたつもりだったがばれたかと冷や汗が流れるものの
「緊張してる」
かっこ悪いのを隠さず素直に伝えれば少しおどろいた顔が小さく笑う。
「たぶん・・・ううん。ボクも緊張してる」
言って俯く頭に俺は改めてその言葉を伝える。
「遊戯」
呼べば細い方が小さく揺れるのに気づく。
「好きだ」
思わず擦れてしまった声だったが確かに伝わった言葉に遊戯は俯く頭を持ち上げて俺を見上げる。
可哀そうなくらい真っ赤に染まった顔はどうしようもなく可愛くて、可哀相の語源は可愛いだったなと頭の隅であまり役に立ちそうもない知識に緊張を誤魔化していれば
「ボクも遊星先輩の事好きだよ」
フィナーレが近いのか次々と打ち上げあられる花火が夜空を飾る中でその小さな唇に重ねるように、やがてその思いを伝えるように口付けを交わした。

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【2010/11/22 14:44 】 | テンペスト
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